なかなか答えにくい課題です。
こうした問題への取り組み方を考えていきましょう。
1 前提条件の検討
まず学校として体育着を忘れた際の対応をどのようにしているかを考える必要があります。
教採の場合はあくまで「想定」にはなりますが、大きく2つに分けられます。
体育着を忘れたら見学
体育着を忘れても実施
この課題ですと、どちらでも考えることができます。
「忘れたら見学」でしたら、その時間にどのように見学をさせるのかの検討が必要です。
座らせるだけにするのか、ノートに記録を取らさせるのか、実施範囲を限定して参加させるのか。
いくつかの方法が考えられます。
場面指導のメインとしては、
見学の指導、次に持ってくる指導
のいずれかになります。
また「忘れても実施」でしたら、次のことを主体として場面指導を行うことになります。
次の時間に持ってくる指導
ただし、現在は、基本的には忘れたからと言って体育を見学にする必要はないと考える学校が多いようです。
子どもたちは中間休み・昼休みと、体操着に着替えずに走り回って、汗ダラダラで教室に帰ってくることもあります。
体育や運動会練習の方が汗をかかないくらいです。
それを指摘された時に「衛生状態がよくないから」という理由だけでは弱いです。
「学校のルールだから」と根本を話しても、その意図の説明を求められたら返しきれません。
更に、次のような記事もあります。
紅白帽を忘れたら、見学? 小学校で「行き過ぎた指導」(朝日新聞デジタル:2021年5月30日)
指導体制が揃っていないと「行きすぎた指導」になるという判定です。
私個人としても、次の時間に持って来させる指導が責任を持ってできなければ参加させる方がベターという考えです。
2 本筋は「忘れ物指導」
指導のポイントと言われる部分がどこかを検討します。
この場合、本筋と考えられることは
忘れ物指導
です。
忘れることは、誰にだって、いつだってあります。
大人だって忘れ物はするのですから。
その時に、何が大切かを指導します。
第一に、忘れた時にどのように対応するかを教えること
第二に、次に持って来れるようにサポートすること
第三に、それらができたら褒めること
抜けがちなのは「第三に、それらができたら褒めること」です。
指導だから叱るのだ、というのは誤りです。
できなかったことができるようになるのですから、それは遠慮なく褒めていいです。
3 伏線は「忘れ物をする背景」
大人は忘れ物をしたら自分の責任です。
子どもの発達段階としては、本人が忘れるのと同じくらい保護者と教員の責任があります。
もちろん年齢にもよりますが…
その背景を探り、対応する方法を検討しておく必要があります。
このような場合、想定されるのが、次のようなものです。
家庭環境
体育嫌い
発達障害
家庭環境
無理強いさせられません。
変えることは困難です。
自分の子どもともなかなか会えない時間帯で勤務している方もいます。
保護者自身やご家族が体調を崩している方もいます。
教員自身が子どもの頃にしてもらっていたことは当たり前ではありません。
指導というのは、相手への思いやりから始まります。
「いいんだよ、当日の一回、そこを持ってこよう」と言って、それでも忘れる。
その時に、学校の予備を貸す。
そう言った対応自体が指導になる場合もあるのです。
体育嫌い
無理強いさせられません。
例えば、ニンジン嫌いの子どもにニンジンの栄養価を語っても効果は薄いです。
先生がニンジンを好きだから、〇〇君も好きだから、で効果がある場合もある程度です。
勉強でも、運動でも、食事でも、それは同じです。
それでもやらなければいけないことがあるのが「大人の社会」です。
発達段階にもよりますが、そういう部分があるというのは教える必要があります。
「体育嫌いなのか。わかる。先生も〇〇が嫌いだから、似たような感じかもしれない。本気で逃げたらやらないで済むかもしれない。でも、やったほうが多分、逃げるよりほんの少しだけいいかもしれない。選ぶのは自分だよね。先生はちゃんと運動着を持ってきて欲しいけれど、体育が嫌すぎて学校に来たくなくなるくらいなら他の方法を考えた方がいいかもしれない。どちらがいい?」
ちょっとがんばると言う。
もしくは、本当に嫌だと言う。
そこまで言ってくれたら、先生の本心を語りながら、一緒に考えていくことができるかと思います。
発達障害
無理強いさせられません。
例えば、ADHD傾向のある子どもの場合、次に興味が移ると、前のことが抜けることが多いです。
そこは指導するポイントではありません。
本人も困っていることです。
だったら、先生がサポートしてあげたらいいのです。
「忘れちゃうのか。だったら一緒にやってみよう。学校から帰るときに、ランドセルの裏に書いてみる。手にメモを握って帰る。お家に連絡をして用意してもらう。他の方法でもいいですよ。どれがよさそうかな?」
今まで毎回忘れていたのが、半分になった。
それでも忘れているのですが、これも成長です。
このように考えると、次のような共通点が浮かんできます。
背景を考えた時点で無理強いをさせられない
学校は楽しく学び成長する場だというスタンスの方が、先生自身も子どもも気持ちよく過ごせます。
4 実際の場面指導
一例を挙げます。
体育が嫌いな児童に対して、共感的理解を示しながら、方向付けを指導する場面です。
教員として伝えたいことを絞り、児童の考えに沿って、流れを作っています。
教採コンシェルジュの指導では、更に細かく、様々なレパートリーを行います。
今回のものはご自身でカスタマイズしてみてください。
また、抑揚や間の取り方、表情といった指導は下記の流れ以上に大切です。
こちらにも留意して練習をしていきましょう。
教員「〇〇くん、運動着忘れてしまいましたね。こういう時、忘れてしまうとドキドキしてしまいますよね。大丈夫?」
児童「大丈夫」
教員「今、家のどこに運動着があるかな」
児童「引き出し?」
教員「すごいじゃん。ちゃんと洗ってしまうまではできているってことだ。最後は学校まで持ってきてくれるといいなと思うんだけど、どうしたら持って来られそうか一緒に考えよう」
児童「いやや」
教員「どうしたの?」
児童「運動会嫌い。体育も嫌い」
教員「そうだったのか。
続きは教採コンシェルジュSchoolで。。。